Prologue

――季節は夏。
ジリジリとアスファルトを照りつける灼熱の太陽に、耳を劈く蝉の声。
街を歩けば、夏休みを満喫しているのであろう子供たちの姿が目に入る。

自分も学生時代は向こう側の立場にいて、夏休みが近付くと心が浮き足立ったものだ。しかし社会人になってみれば、夏休みなどあってないようなもので。
特に東雲は、大手不動産会社「アルビー」のエリート社員だ。休暇など、個人の都合でそう簡単に取れる訳が無かった。

「……はー…」

東雲は不動産の仕事を愛している。天職だと、言ってもいい。
けれどこの期間だけは、楽しげな笑顔と笑い声をあげながら街を闊歩する学生たちを見て、羨ましい、と一瞬思ってしまうのだ。それが当たり前に与えられていた学生時代には微塵も思わなかった、ささやかな羨望。
あの頃は、友人たちや恋人と遊ぶより、家族とどこかへ出かける事の方が楽しくて、そこまで特別に感じてはいなかったというのに、今になってそれが羨望へと変わっていく。その理由は、やはり――。

「…あっちぃ」

容赦なく照りつけてくる太陽に顔を歪ませると、ビシリと着込んだワイシャツをだらしなく腕まくりして。
ぼんやりとした足取りで、東雲は取引先の会社へと向かうのだった。

♂ ♂

「え、海…っすか…?」

――夜。珍しく会社を定時に終えた東雲はそのままの足で、三宮邸を訪れていた。
副業の方の雇い主である三宮万里に、急遽呼び出されたためだ。
てっきり夜勤の人数が少なくて呼び出されたのだと思い、ロッカーへ寄り自分に割り当てられた執事服に着替えたのだが、橘に言われ向かわされた先は、万里の寝室であった。
……また同衾の相手か、と半ば諦めにも期待にも似た複雑な想いを抱えながら言われた通りに万里の寝室へと向かえば其処には、想像通りの人物と、想定外の用件が待っていた。

「ああ、お前今年はまだ夏休み取れてねぇンだろ?」
「あ、はい。有難い事に今年は契約が例年より多く取れてるんで。その分休暇は取れないですけど、全然苦じゃないっすね」

ニカリ、と相変わらずの笑みを浮かべながら万里の質問に答える東雲に、万里は呆れまじりの笑いと溜め息を零した。

「お前はほんと、相変わらずだな…」
「……俺の生き甲斐っすから」
「フン。そうか、まあ気持ちはわからんでもないが…な、休める時には休むモンだろ?」
「へ?ああ、それはそうっすよね。でも俺の場合それがいつになるやら…」

ははは。と乾いた笑いを零し、頬を掻く東雲。
万里はそんな東雲にニタリと相変わらずの悪戯めいた笑みを口元に讃えながら、机の引き出しから一枚の紙を取り出し内容が東雲に見えるよう、翳して来た。

「?なんすか、それ」
「いいから読め」
「はぁ…。えーと、なになに。…東雲健吉の有給休暇を八月XX日から四日間……って、えぇ、ちょ…待って下さいよ。なんすか、これ…」
「お前の有給休暇届だが?」
「――いや、ちょ…いくらご主人様でも無理ですって。俺、今抱えてる契約が多くて休めないんすよ…会社に迷惑かけちまう」
「問題ない。お前んトコの会社にも上司には既に話を付けてある」
「はっ!?ま、…た、あんたは勝手に……」
「ご主人様、だろ」

いつだって、万里の言う事は唐突で事後な事ばかりだ。
東雲が屋敷に雇われた時だって、そう。外堀から埋められて、半ば脅しのような契約を交わさせられた。
けれど、いつからか…いつからか、東雲はこの屋敷へ通うことが嫌ではなくなり…万里にこうして振り回される日々すらも、どこか幸せを覚えるようになっていった。

「…ッ…ご主人様。でも、これは流石に――」
「ふん、問題はない。お前のいない間は俺の方で何人か人を遣る事になっている。お前ほどではないが…優秀な奴らを、な」
「……、…はぁ」

自信に満ちた表情。東雲が断る筈がないと、心の底から信じきっている…否、そもそも断られる事すら概念がないのだろう。
案の定、東雲は諦めたような溜め息と共に反論することをやめ、あっさりと降参したのだった。

「それで、なんで突然海なんですか…?」
「何を言ってる。夏と言えば海だろう」

まるでこちらの方がおかしなことを言っていると言わんばかりの言い方に、相変わらずだとそれだけで済ましてしまう程度には、東雲もすっかりとこの屋敷に染まっているようだ。
どこか世間とはずれている万里の考え方に、自信に満ちあふれた発言にクスリと笑みが零れる。

「……ま、間違ってはないっすけど…お盆過ぎるとクラゲが大量発生するんでもうろくに泳げませんよ」
「ふん、そんなことは知っている」
「なら……」

海じゃなくてプールに、と東雲が言いかけたところで、万里は机の上に置いてあった紙の束をポイッと東雲に投げつけてきた。

「うわっ」

突然の事に動揺しつつも、持ち前の運動神経でなんなくそれをキャッチすると内容に目を通す。…また、自分の本職の事を勝手に決められたのではないか、と思ったからだ。
しかし、そこに書かれていたのは東雲の思ったもの、ではなく。…三宮が所持するプライベートビーチがピックアップされたリストだった。国内外を問わない、それ。

「……は、」

東雲が驚いたのはもちろん其処に書かれた文字の内容を理解して、もあったが何より…それがプライベートビーチだけに絞ったリストにも関わらず、重みを感じるほどには厚みのあるそれだったからだ。

三宮グループを侮っていた訳ではないが、これほどまでとは思わなかった。
三宮邸に雇われ、既に1年と数ヶ月経っている。イベント事が好きな万里は行事の度にその圧倒的な財力で、手の込んだ舞台や衣装を用意している事は勿論身を以て知っているし、理解はしていた。している、つもりだった。
けれど、まさかここまでとは――。

三宮が経営するホテルはそのブランド名に相応しく、どれも最高級のものばかりだ。そこから見えるオーシャンビューは格別だという事は周知の事実である。
けれど、このリストにピックアップされたものはそうした三宮が経営しているホテル、を除いた”三宮万里”が個人で所持している別荘の、プライベートビーチに限られていた。

「……なんだ、そんな間抜け面を晒して。キスでもして欲しいのか?」
「はっ!?ち、違いますよ…!」
「…くくっ、冗談だ。ま、その中からどれでも好きなところを選ぶがいい。俺は海外でも構わないが……限りある有給を移動に使うのはバカらしいと思うぞ」
「いや…えっと…、他の皆はなんて言ってるんですかね…」
「ああ、今回はお前と俺の二人だけで行く事にした」
「―――は?」

今、この人は一体何を言ったのか。
万里から告げられた言葉はあまりにも東雲の想像を絶するもので、思わず脳みそが言葉を理解することを拒絶する。

「聞こえなかったか?ならもう一度言ってやろう。今回俺はお前ひとりだけ連れて行く事にした」
「……なんで、また」

夏休みの海、なんて屋敷の執事たちを集めて大盛り上がりするには絶好の機会だろうに。
それをどうしてわざわざ自分だけを誘うのか。東雲には理解出来なかった。

――トクベツだなんて自惚れるほど、めでたい頭はしていない。恐らくまたタダの気まぐれだろうと、ほんのりと期待に心躍る気持ちに気付かないフリをして、へらりと笑う。自分の本当の気持ちには蓋をして。
まだ隠せる。まだ、誤摩化せる。きっと、まだ今なら……。

「……最近疲れた顔をしているだろう。たまには息抜きでもしろ」
「……っ、」

――気付いていたのか。

東雲は自分の気持ちを隠すのが得意だ。けれど時折、ほんの少しだけ気を抜く事がある。

充実した仕事内容と、それに追い付いて行かない自分の身体。それに加えて屋敷での、副業。
どちらかが忙しいからといってもう片方を蔑ろにするなど、社会人として…それから、東雲自身が嫌だった。どちらも東雲にとっては大切なものだからだ。
休みなどろくに取れぬまま、どちらも手を抜く事をせず今日までやって来た。
恐らくいつ限界が来ても、可笑しくなかっただろう。万里により強制的に休暇を取らされなければ、このまま休みがない、なんて事も十二分にあり得たかもしれない。

「ふん。なんだ、驚いた顔をして。俺に隠し通せるとでも思っていたのか?まぁ、そーいうことだ。とっとと諦めて、大人しく行き先でも決めてるんだな」
「…ありがとう、ございます。…ご主人様」

へにゃり、と情けなく眉尻を下げながら、東雲は嬉しそうに笑う。

自分勝手で我が儘で、いつだって人のことを振り回して。
それでもこの人を憎めないのは、きっとこうして本当に自分たちが疲れた時、参っている時、乱暴なやり方だとしても、当たり前のように手を差し伸ばしてくれるから。

「フン。なんのことだ」

照れ隠しのようにわざとニヒルな笑みを携えながら鼻を鳴らした万里に、東雲はもう一度、微笑むのであった。

♂ ♂

ジェット機から降りて、東雲をまず驚かせたのは無人島、と呼ぶには抵抗を覚えるほどに、そこはひとつの完成された世界のようなところであったことだ。
まるで五ツ星ホテルのような豪華な建物が聳え立ち、けれど、適度な自然が保たれた美しい景観。

そして真っ白い砂浜と、一面の青い海。
足首まで浸かるほどの距離まで近付けば、水面を泳ぐ魚の姿が肉眼で捉えられるほどに透明度の高い海水が、穏やかな波をつくって足をゆったりと撫で、逃げるように引いていく。

「はー……すげー」

一度二人きりの旅行を認めてしまえば、其処から先は早かった。
万里の確保してくれた有給を最大限に有効活用する為に、それほど時間が掛からず、水が綺麗で、静かで寛げる場所と条件を決めれば引っ掛かるビーチの数はそう多くはないからだ。

「……やっぱ、一般公開されてる海水浴場とは違いますねえ」

やはり訪れる人が多いからか泳ぐ気力がなくなるほどに、都会の海水浴場は汚いのだ。
それとはまるで大違いの、美しいプライベートビーチ。此処は万里が所有している無人島のひとつだった。

「当然だろう」

自分が褒められている訳でもないのに、誇らしげに笑う万里。
東雲はそんな万里にまたフと口元を吊り上げ、また視線を水面へと移した。

「――ほんと、綺麗だ」

足を撫でる冷たい水も、ゴミひとつない白い砂浜も。
自分でも知らないうちに、疲れきっていたのだろう。もしかしたら、案外限界は近かったのかもしれない。穏やかな波音に、斜め後ろに立つ存在に…ただただ心が落ち着いていく。癒されていく。
どんな気まぐれでも良い。ほんの束の間の幸せだとしても、構わない。…今、自分がこうして万里と共に過ごせる事が、幸せで堪らなかった。

「ご主人様、ありがとうございます…俺を、連れて来てくれて」
「フン、お礼を言うのはまだ早いな。…どうせなら、終わってからにしろ」
「そう、っすね」

無人島という非日常の場で、これから数日間、万里と共に居られる事が東雲にはひどく楽しみで、嬉しくて堪らなくて。
暫くこの緩みきった頬は、戻りそうになかった。

「海は後でまたいくらでも連れて来てやる。そろそろ別荘に行くぞ」
「……あ、はい」

別荘、とは先ほどから遠目に見えるあの豪華絢爛なところだろうか。
否、それ以外にないだろう。ここはすべて万里個人の持ち物であり、あれだけ立派なものがあれば他に宿泊施設など必要ない。
どうしたって東雲の感覚は普通のそれだ。豪華すぎるものは気後れしてしまう。…別荘だけは落ち着けそうにないな、と苦笑いを零しつつ、歩を進める万里の後に着いて行く。

「乗れ」
「わっ、いつの間に車なんて…」
「さっきだ。お前が海に夢中になってる間に呼んでおいた」

万里の後を着いて行くと、そこには先ほどまではなかった車―一見して高級車だと分かるそれが鎮座していた。

「って、これ…ランボルギーニじゃないっすか…」

エンブレムが目に入り、思わず目を剥く。
自動車にそれほど明るくない自分でも分かるイタリアの高級車メーカー、ランボルギーニだ。
万里が所持していたのは、アヴェンタドール ロードスター。自動車にそれほど拘りがない東雲ですら、思わず少年のように心躍らせてしまう。…それほどそう簡単にお目にかかれぬ代物であった。

「ああ、折角の海だからな。オープンカーの方が気分が良いだろ?」
「確かに、潮風が気持ちいいですよね」

素直に同意すると、万里はフと笑みを零しながら東雲に助手席に乗り込むように促した。そうして言われるがままに車に乗り込み、万里が運転席へと乗り込んで東雲ははじめて、違和感の正体を知る。

「…あれ、運転手はいないんですか?」
「ああ、帰した」
「へ…、なんで…」
「折角の二人きりの旅行、なんだろ?」

サングラスを掛けながら揶揄めいた口調でそう言った万里に、東雲はぽかん、と口を開いてから少しして…その意味を理解し、サっと頬を赤らめた。

「なんだ、照れているのか?」
「……照れてなんか、」

東雲の反応に、万里はクツクツと喉を鳴らしながら運転席から身を乗り出し、助手席に座る東雲の唇に、口付けた。
突然の万里からのキスに東雲は目を見開いて、それからキスをされている事を理解すると、そっと瞳を閉じる。

重ねた唇を舌で撫でられ、それに応えるように薄く唇を開けばぬるりとした舌が入り込んで来て。万里の舌に自らの舌を絡めて、首の後ろに腕を回す。
そうすればそれがもっともっと、と強請るように思われたのだろう、万里の口づけは更に深いそれへと変わっていって。
名残惜しげに唇を離した頃には、すっかりと東雲の息は上がっていた。

「…くく、顔が赤いな。どうした、刺激的過ぎたか?」
「なんで突然、」

――キスなんて…。
そう問いかけようとした唇は万里の指が下唇を撫でたことにより、続きを紡ぐ事はかなわなかった。

屋敷でもっと激しい事だって、何度もされて来たというのに。
東雲の鼓動は狂ったように激しく高鳴り、自分でも自覚出来るほどに頬が紅潮する。…雰囲気と、二人きりというシチュエーションにすっかりと酔いしれてしまったかのように、キスだけで東雲に宿ってしまったこの熱は、暫く冷めそうになかった。

だというのに、万里の方は動揺を微塵も感じさせず、東雲の頭を軽く撫でると、サっと東雲から身を離し、手慣れた仕草で片手でハンドルを操作しながら、サングラス越しの太陽に眩しそうに眉を顰める。
そんな万里の横顔を眺め、東雲は自分でも単純だと思いながらも胸の高鳴りを抑えることが出来ないでいた。

なんだか女の子が、ドライブデートを好む理由も…分かる気がして。先ほどのキスの続きを、期待している浅ましい自分がいて。
ただただ冷たい潮風に紅潮した頬を撫でられながら、別荘に着くまでの間、万里の横顔を眺めていたのだった。

♂ ♂

「着いたぞ」
「あ、はい。……って、あれ」

万里に促され車から降りると…視界に映ったのは先ほどの豪華絢爛なホテル――ではなく、万里にしては質素な(勿論一般人の感覚からしたら十二分であるが)、ペンションであった。
個人が所有する無人島に何個も宿泊施設は必要ない。当然東雲はこれから三日間、其処を使うと思い込んでいたのである。

「…ああ、あそこだと落ち着けないからな」
「………、」

万里の言葉に思わずぽかん、とだらしなく口を開いてしまう。
その口ぶりはまるで、先ほど自分が考えていた事そのもので…。

「……なんだ、不満でもあるのか?」
「不、満…なんて、とんでもないっす、むしろ助かるっていうか……」

むしろ、不満どころか万里の気遣いが嬉しくてたまらないのだ。
どうしたって庶民の感覚から抜け出せない自分が、あんなホテルでゆったりと休める筈がないのだ。食事だって、出されるのはきっと”美味しいけれど口には合わない”もので。

「…フン、相変わらずだな」

もごもごと歯切れの悪い返事を返す自分に、万里は呆れもせずただ相変わらずの笑みを浮かべながら、それだけ言って、ペンションの中へと東雲を促したのである。

「すげ…」

リビングダイニングまで案内されたところで、思わず、と言った様子で東雲は感嘆の溜め息を漏らした。

なんだかんだ豪華な調度品に溢れているのだろうと思えばそんなことはなく、むしろ天然木を基調とした落ち着いた内装であった。
息を吸い込めば鼻腔に感じる木の香りに、癒しと安らぎすら覚える。
しかしシンプルながらに最高級の品質を誇るであろう家具は、厭味なく空間に馴染んでいて、持ち主のセンスを感じさせた。

リビングダイニングから見えるテラスに置かれたガーデンファニチャー。
あのハンギングチェア気持ちよさそうだなあ…だなんてぼんやりと考えていれば、東雲の考えが分かったのだろう、万里はクツクツと喉を鳴らしながらサッシを開け放ち、テラスへと東雲を導く。

「座ってもいいんだぞ?」

何時間でも其処に居て苦を感じさせないような、ゆったりとした空間。
テラス越しに見える一面の海に、思わず息を飲んだ。

「はー…もう、至れり尽くせりっつーか…」
「なんだそりゃ」

万里に促されるままにハンギングチェアに腰掛ければ、ゆらゆらと揺られる不思議な、それでいて心地好い感覚に、うっかりと気を抜けば今にでも意識を手放しそうになり、慌てて飛び降りる。
こんなにゆったりしていたら、本来の目的である海にいつまで経っても入れない、と思ったからである。

「東雲?」
「いや、こんだけまったりしてるといつまで経っても海まで辿り着けねえよなあ、って思いまして」

飛び降りた東雲を怪訝な表情で見遣る万里に、照れ笑いのように頬を掻きながらそう告げる。と、万里は一瞬目を丸くさせ、それから揶揄うように笑った。

「なんだ、そんなに早く海に行きたかったのか?それなら早くそう言え」

自分もまさかこんなにのんびりする気ではなかっただとか、元はと言えば海に行きたいなんて言い出したのはそっちだとか、言おうとして止めた。
実際楽しみにしていたのは事実であるし、なによりそんな小さな事で今の気持ちを、この穏やかな雰囲気を壊したくなかったからである。

漸く、と言うべきかもう、というべきか。
万里により必要最低限別荘の中を案内され終わった東雲は、リビングダイニングに戻ると「必要なものだけ持っていけ」とだけ告げられ、自分の持って来た鞄を手渡された。

そういえば見かけないと不思議に思っていた荷物はヘリから降りた時点で、先にペンションへと運ばれていたらしい。
元々最低限の荷物しか持ってきていない東雲は、ほぼ持って来た状態のままのバッグを手にし、万里の待つ車へと走るのだった。