万万

下着姿で拘束されている三宮を妄想してみよう。

不愉快な圧迫感と窮屈感に、万里は目を覚ます。

「…ぅ…、ん…」
「…目が覚めた?」

半ば半強制的に覚醒させられた苛立ちと、自らの巫山戯た格好をみとめ、目の前の人物と睨みつける万里。
するとへにゃりと人懐っこい笑みを浮かべながら目の前の男は全く怖がっていないような声色で「おお怖い」とのたまって。

「お前、悪ふざけも程々にしないと後で痛い目にあうのはお前の方だぞ」
「ふん?随分と面白いことを言うんだな」

目の前の男は、万里とあまりによく似ていた。それはまるで、合わせ鏡のように、双子というより、もはや同一人物の如く。

「…早くこの縄をほどけ」
「そう言われて素直に解くと思うか?この俺が?」

ーーそんなこと、他の誰よりもお前が分かっているだろう。
そう言わんばかりの笑みすら浮かべながら、目の前の男は万里を嘲笑うかのようにくつくつと喉を鳴らす。

「なあ、万里」

素肌に下着だけを纏わせた頼りなげな格好の万里とは対照的な、人懐っこい笑みとは裏腹の黒尽くめの衣に身をまとった男は、耳元で囁きながら、万里の素肌に指を這わせていく。

「…さ、わるな…っ」
「そんなにつれないこと言うなよ。可愛くないヤツだ」

拘束されながらも必死に抵抗の色を示す万里を、言葉とは裏腹に男は愛おしそうに見下ろして。

「楽しもうぜ?」
「戯けろよ」
「俺はお前なんだから。俺らがどれだけ絡み合おうが自慰行為してるようなもんだろ?」

それは今は懐かしきハロウィンの後、散々暴れ尽くしたジャックは完全に万里の体から出て行ったと、誰もが思った。思っていた。けれど、それは大きな間違えで。

ジャックの大きな力の残滓が、万里の体を苗床として、ジャックとは似て異なる人格を育て、いつしか生まれたのが今万里の目の前にいる男の正体だ。

「さあご飯の時間だぜ、ゴシュジンサマ」

こうして万里から分裂しひとつの個として生きることとなった今でも、男は月に何度か食事と称し万里を食む。男曰く、エネルギーを蓄えているらしく。

「は、…なせ…っ」

ただでさえ拘束された万里の体は、さらにバカ強い力で掴まれ身じろぐ事すら出来やしない。
何度貪られても強い光を失わない万里の瞳に、存在に。

「しゃぶり尽してやるよ、オリジナルさん」

その存在も魂も、ただの力だった自分が万里の体にいた頃と同じように今度は自分が取り込んでやると、それはオリジナルを越えたいという思いからか、それとも自分も所詮、万里という存在に魅せられたひとりだからなのかーー今の男にはまだ、その答えを知る由もなかった。

万里×万里。
どうしてこうなった。