主進

ねこ耳のちび政春が「いじめちゃイヤです、ご主人様…」と言っています。耳を撫でると頬を染めて目を閉じるでしょう。
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執務室で書類と睨めっこしていると、ノック音と共に扉の向こうから聞こえて来たのは聞き慣れた、けれど耳に馴染むそれよりは幾分か高く、幼さの混じった声で。
入室の許可を出しても一向に開かれる気配のない扉に不審に思った俺は小首を傾げながらその声の主の名を呼んだ。

「――進藤さん?」

扉の向こうから、微かに聞こえる息を飲むような音。そして少しして、ゆっくりと躊躇いがちに開かれた扉。

「……っ!?」

そしてその扉から、ひょっこりと顔を覗かせるー進藤さんの姿。

「あ…っ、そ、の…ご、主人…様…わ、私…」

いつもよりか少し舌ったらずで高く、けれどハキハキとしたそれは間違えなく進藤さんのもので。
モジモジと身体を揺すらせながら、けれど何処か期待するような眼差しを向けてくる。

「……あ、朝…起きたら、突然…っ」

期待と同じくらい、不安もあるのだろう。瞳を潤ませながら進藤さんは状況を説明し出した。

「……なるほどな」

進藤さん曰く、こうだ。
朝起きたら突然いつかのネコ化と同じように、耳と尻尾がついていた。しかしそれだけではなく、身体も縮んでいた、けれど精神は大人のままだと。

「つまり、進藤さんにも理由は全く見当が付かないんだな」
「は…、い」

ふむ。短く声を漏らし、改めて進藤さんの姿を眺める。
子どもらしいふにふにとした丸みを帯びた身体に、女みたく長い睫毛。頼りなげな細い肩は震えていて。

「ちいさい進藤さんを進藤さんと呼ぶのも不思議な気分だな」

自分より年上の、けれど純粋で一途で淫らな、俺の為ならば、何処までも堕ちてくれる。かわいい人。

「…あ。わ、私の事はお好きに呼んでください…っ」
「…あぁ。それより、もっと近くでよく見てみたいな。前の時とどう違うのか、さ」

頬杖をつきながら、笑う。そうすればその言葉にいつかのことを思い出したのか、進藤さんは顔を真っ赤にさせながら、モジモジと内股をこすり合わせた。…ほんっと、かわいい人だ。年上とはとても思えないくらい、純粋で、疑う事を知らない。

「ーーおいで」

ちらちらと上目遣いで(尤も故意のものではなく身長差によるものだが)俺を見やる進藤さんに、優しく笑いながら両手を広げれば――

「ご、主人…さま…っ」

進藤さんは顔を更に赤らめながら珍しく飛びかかるようにして、抱き付いて来たのだった。

「おっと」

タックルのように飛びついて来た進藤さんを落とさないようにしっかりと抱き寄せながら、半ば衝動的にピクピクと動くねこ耳を引っ張った。

「…ぃ…った…で、すっ、いじめ、ないで…ご主人様…」

すると余りに痛かったのか、進藤さんは目に涙を浮かばせながら言って来たので、痛みを和らがせるように耳を撫でてやる。

「ごめんごめん、耳をピクピクさせる進藤さんがーー政春が可愛かったから、つい」

抱き寄せる腕の力を強くしながら、わざと耳元で囁くようにそう言えば、進藤さんは頬をサクラ色に染めながら、幸せそうに瞳を閉じたのだった――。