バイト万里

あなたは15分以内に3RTされたら、同じバイト先の知り合いの設定でいきなり告白されて戸惑う三宮万里の、漫画または小説を書きます。 http://t.co/kWPdyOr3Lo

社会勉強としてバイトをはじめたのは、今から数ヶ月ほど前のこと。

「じゃあ三宮、悪いけどこっちのレジお願い出来る?」
「任せて下さい」

大学の先輩である男の紹介という事もあり、簡単な面接だけの採用試験。
余り規模の大きくない職場だからか、バイトも全部で十数人しかおらず、その大半が男である為面倒も起こらない。

「悪いな」

にへら、と人懐っこい笑みを浮かべ、万里の頭をぐしゃりと掻き回すようにして撫で回す先輩。
普段ならば振り払う万里だが、呆れたような溜息ひとつ零しただけで抵抗はしない。
それはこの男に恩があるからか、はたまたこの男の人柄故か…それは万里ですら良く分かってはいなかった。
へらへら笑う、自分より少しだけ目線の高いその男を見上げる、と。

「ん?」

そうすれば男は、小首を傾げながら笑う。
それはまるで子犬が、どうしたの?と問いかけるそれに似ていた。

「なんでもないですよ」

つまるところ、絆されたのだ。
三宮という壁をなんてことなく突き破り、真っ直ぐに自分という存在を見てくれたこの男に。

※ ※ ※

「悪いな、今日はシフト夕方までだったのに延ばさせて」
「別に平気ですよ。あの量のお客は、流石に先輩ひとりじゃ捌けないでしょうし」

夜のシフトを入れていた筈のバイトがひとり、急病で来られなくなったと連絡があったのが万里が上がろうとした少し前のこと。
それも困ったように眉を下げる先輩に、万里が無理矢理聞き出したのだ。
おおかた事情を話せば万里が代わると言い出す事が分かっていた為、口を噤んだのだろう。

「うん…でも、本当に助かったからさ」
「役に立てたなら良かったですよ」

店閉めの準備をしながらそう言えば、先輩は困り笑顔のような表情をつくる。

「お前は本当に仕事を覚えるのが早いよな。俺が教えることなんて、なくなってしまいそうだなあ」
「……」

少しの寂しさを含んだその言葉に、万里は何も言葉を返す事ができなかった。

「…なあ」
「なんですか?」
「ーーお前のこと、好きだって言ったらどうする?」
「……っ、え…?」

いつものへらへらとした表情とは違う、真剣なそれに男の本気を知る。
ゴクリ、とシンとした店中にどちらともつかない喉を鳴らす音が響き、万里の頭の中は未だかつてない程の混乱に襲われていた。