アル主前提モブ主

――これを付けて御遣いに行って来てください。Bonne chance!(幸運を祈ります!)
そう言ったアルバートの憎らしい程の笑顔を思い出し、万里はまたひとつ悪態を吐いた。

「…ッ、く…そ…っ」

アルバートによって半ば無理やり屋敷を追い出されるような形で、街へと繰り出すことになった万里。
主である自分が、一介の執事による命令に素直に従うだなんて、そんなことあって良い筈がない。筈がなかった。
けれど――すっかりとアルバートから与えられることに悦びを感じてしまうようになった万里には、その命令を拒絶することができなくて。

「……は、……ッぅ、」

必死で平常心を保とうとしても、身体を蝕む快楽という名の圧倒的な存在感を無視することなど出来るはずもなく、自然と瞳は潤み、息は荒くなっていく。

ただ目的の場所に向かう。それだけのことが、こんなにも苦しいだなんて。

普段ならなんてことのない行き交う人々の視線が、今日は妙に気になって、そのことにまた身体が熱くなる。
…気付かれているのではないか。そんな事あるはずないと解っていながらも、そんな疑心暗鬼に陥ってしまうのは、それだけ自分に余裕がないからだ。
もしかしたら、まわりにバイブ音が聞こえているんじゃないか、だなんて。そんなこと有り得るはずないのに。

「………っ、う…ぁっ」

また一歩、進む度に巧みに万里の弱い箇所を的確に攻め立てる小さな玩具に、思わず声が漏れる。その声に視線が集まり、万里は刺激により上気した頬を隠すように下を向いて、強い刺激が去るのを、ただ黙ってやり過ごす。

もしかすると――アルバートが悶える自分の姿を遠くから眺めて楽しんでいるのではないか。
そんな疑問さえ抱いてしまうほど、それは的確に強さを変え万里のナカを虐め抜いていく。

確実に前立腺を掠めて来るというのに、決して決定打は与えない。もどかしい刺激に、アルバートから与えられる狂おしいほどの刺激に慣れた身体は欲深く、もっと明確な刺激が欲しいと貪欲に求めてしまいそうになる。
どうにかしてこの疼きを抑えたいと、無意識に視線が向くのは街中を行き交う人々の――。

「……っ」

其処まで考えて、自分のらしからぬ考えに、慌てて頭を振る。…どうか、している。欲しい、だなんて。

「……は、っ…帰ったら、…覚えてろ…」

そんな負け犬の遠吠えをするしか、今の自分には出来なくて。
疼く身体に叱咤し、アルバートの”御遣い”とやらを済ますべく、ひとつの店に足を踏み入れるのだった。

♂ ♂ ♂

「…っ」

店に入るなり視界いっぱいに入り込んで来る華やかな色。集まる視線。十人十色の反応を示す人々に、万里は一瞬だけ怯むが、すぐに冷静さを取り戻した。

「お客様、なにかお探しですか?」

周囲の戸惑いの様子を余所に、手慣れた様子のにこやかな女性店員に声を掛けられる。

「……え、ぇ。…彼女に贈るプレゼントなのですが」
「まあ、ステキ。きっとお喜びになりますよ。…サイズはお解りですか?」
「―――そう…ですね、…大体は―――」

適当に数字を言い、店員にそのサイズが置いてある場所へと案内される。…散々見慣れているはずなのにどうしようもなく妙な気分になるのは、自分のナカに埋め込まれたモノにより高められた身体のせいだろうか。それともこの異質な状態のせいなのか。

「…お、すすめとかありますか…?」
「そうですね、今ですと――この辺のものが大変人気となっております。」

そう言い指差されたのは、シンプルでかわいらしいピンク色のソレと、シースルーのソレ。あまりに対照的な、ふたつだった。

「……、」
「だいぶ雰囲気も変わりますから…用途により使い分けるお客様がとても多いですね」

にこやかに微笑む店員に、相変わらずチラチラとこちらを見るお客たち。…長居は、出来ないな。元々したくもないが。

「では…このふたつ、をお願いしま…す」
「ありがとうございます」

昂る身体を必死に抑え、なんとか言葉を紡ぐ。
兎に角この場から抜け出したい、その一心で。

♂ ♂ ♂

「……っ、く…そ、なんで…俺がこんな…ことッ」

購入したものを半ばかっさらうようにして受け取ると、足早に店を出て近くの公園の公衆便所へと駆け込む。

そうして、購入したものを綺麗にラッピングされた袋から取り出すと、万里はおもむろにそれを取り出して――服を脱ぎ出した。

そう、万里が買ったもの、それは所謂女性用下着、というものだった。ひとつはかわいらしいデザインの下着、そうしてもうひとつは大人っぽく艶やかなベビードール。
万里の今日の御遣いの目的はまさしくこの、下着で。リモコンを埋め込まれながら、女性用下着を買い、それを着用する――。それが、アルバートからの命令だった。

ズボンを脱ぎ捨て、既に濡れそぼり役目を果たしていなかった下着を脱ぎ捨てると、既にタグの取られたそれを手に取り、ゆっくりとそれに足を通した。
後ろに埋め込まれたリモコンが抜けないよう、便座に腰掛けながら、ゆっくりと。

「……ぁ…っ」

双丘の間に食い込む生地が、リモコンを更に奥へと押しつけて。
屹立したそれは苦しいほどの締め付けを受け、なお収まりきらずに顔を出していた。
妙な背徳感と、抑えきれない興奮。息を荒くしながら、同じようにブラジャーを着用すれば、普段感じることのない胸部への、圧迫感。
ふいに、屹立した自身に手を伸ばしてみれば。

「ふ、ぅ…ぁあ…っ」

やっていることは、ただの自慰だ。
だというのに、それは強烈な快楽をもたらし、更なる刺激を欲し大胆な手つきになっていく。

片手は、ブラジャーの上からぷっくりと熟れた乳首をなぞり、もう片方はだらだらとだらしなく涎を垂らしている自身を攻め立てる。

「は、ぁ…はっ、ぅ…うン」

便座に腰掛け、だらしなく股を開いて。いつの間にか乳首を虐めていた手は、今やTバックの方へと。そうしてTバックを引っ張り上げると、リモコンは更に奥を攻め立てる。

――いつしか、プライドも恥もかなぐり捨てて、行為に没頭している自分がいた。

「は、ぅ…ああッ、ンんー!」

Tバックを横にずらすと、リモコンを埋め込んだまま、自身の指をひくつく其処へと押し込んで。
声を殺すことなど、とうの昔に忘れていた。否、そんな余裕すら万里は持ち合わせていなかった。

屋敷で、中途半端に慣らされた身体にリモコンを挿入されたあの時から、リモコンを埋めながら街中を歩いていた時から、後ろを攻め立てられながら女性客の視線を受け、自分の付ける下着を選んでいるあの時から。――万里は、限界だったのだから。

トントン。

だから、忘れてた。

「あの――」

此処が公衆便所であり、見知らぬ誰かが入って来る可能性は十二分にある、と。

「……ッ、」

快楽に飲まれ、自らを高めている最中の見知らぬものの声。トントン、と叩かれるトイレの扉。
万里の背中に、冷や汗が伝う。けれど、高まりきった身体は、急に沈むことは出来なかった。

「…ぁ、アぁァ…ッ!」

要するに万里は、見知らぬ男の声を聞きながら絶頂し、トイレの扉に射精する、という情けない結末を迎えてしまったわけである。

「…っ」

冷静になった途端、浮かんで来るのは後悔という二文字。
だというのに、自ら扉に手を伸ばして、そして――。

♂ ♂ ♂

「…ァ、あ…っ!」
「でもまさか、びっくりだなあ。三宮の若社長サンがまさか、こんなにスキモノだなんて――」

万里を揺さぶりながら、男は笑う。

公衆便所の床に乱雑に投げ捨てられているリモコンは、先ほどまで万里をずっと苛んでいたもので。
男は万里の尻たぶを乱暴な手つきで鷲掴み拡げる。その間にも抽送を繰り返す男の肉棒に、万里は堪らず腰を揺らす。…誤摩化していても、それは今日一日ずっと、待ち望んでいたものだった。

アルバートにより調教され尽くした万里の身体はすっかりと肉棒の味を覚え、リモコンの刺激では満足出来なくなっていたのだから――。

「ひ、ぁ…っ、あ…っ、も…っ」
「も?」
「も、っと…っ、…ナカ、突い、て…っ」

便座に手を付き、男に揺さぶられるままに嬌声をあげて。
きつい圧迫感と、リモコンでは感じられなかった熱量。だらだらと涎を垂らす自身は、相変わらずきゅうきゅうと締め付けられていて、それが苦しさと共に強い快楽をもたらしていた。

男にブラジャーの上から胸を痛いくらいに詰られ、揺さぶられ。脳まで混ぜられたかのような錯覚を覚えるほど、それは強烈な刺激を万里へと与えていた。

「ほんと、スキモノ…っ」

そう言うと、男の限界が近いのだろう。今まで以上に乱暴な腰つきに、万里の熱もまた昂っていく。
厭らしい水音が辺りに谺し、それもまた、ふたりの興奮の材料となっていく。

――それはまるで、獣のような、セックスだった。

♂ ♂ ♂

「はー、すっきりした」

それは、まるで排泄を終わらせた後のような一言。尤も、似たようなものではあるわけだが。

「…また寂しくなったら声かけてくれていいですよ?」
「冗談は顔だけにしろ」
「あっはは、ホントむかつきますねー、三宮さん。ま、いいや。俺もいい思いさせて貰ったし、黙っといてあげます」

妙にあっさりと、男は万里から手を引く。万里はそんな男の態度に些か違和感を覚えながらも、それ以上にアルバートの言いつけを破った、という事に意識が向かっていて、それを追求することはしなかった。

「…あ、セシルさんですか?え、ええ…約束通りしじり公園の公衆便所へ向かいましたよ。それで、ええ。ええ――」

すべて、アルバートの筋書き通りだなんて、思いもしないで。

♂ ♂ ♂

「…帰ったぞ」
「おや、Bonjour。ふふ、随分と疲れた顔をしていますね。私が癒して差し上げましょう。おいで」

屋敷に戻りそう言うと、アルバートに振り当てた客室へと連れ込まれる。

「――どうでしたか?」
「最悪だ」
「C’est vrai?でも――その割には満足そうな顔をしていますよ」
「……嘘を吐くな」
>「嘘ではありません。その証拠にココも――ほら。かわいらしく実っていますよ」
「……ッ」

自然な動作でベッドに押し倒され、ズボンの上から形の解るソレを撫で上げられる。

「ふふ、すごく濃厚な匂いですね」

そうしてそれに顔を近づけると、アルバートは舌舐めずりをしてわらうのだった。

「ご褒美をあげなくてはなりませんね、万里」
「…ご、褒美…?」

条件反射的に、アルバートに触れられた途端に更に熱を持つそれ。後ろが、キュンと窄んで。…ご褒美、その言葉につぅ、と既に役目を果たしていない下着がまた、滲みを増やしたのを感じた。

「Oui.きちんと私の言う事を聞けましたからね――ああ、でも」
「…、ぁッ」
「――ガマンが出来ないなんて、悪い子ですね」

クツクツと喉を慣らしながら、アルバートは屹立した自身を万里のものに押しつけながら、耳元で笑って。
そうして腰を揺らせば、じわりじわり、と万里のズボンを濡らす先走り。

「淫乱で可愛いですよ、万里」

チャックを下し、アルバートの目にうつったのは屹立しだらしなく涎を垂らす万里のもの、とそれをぎゅうぎゅうと締め付けている女物の下着。

アルバートはそんな万里のモノに唇を寄せると、その男臭い万里自身を、ゆっくりと咥内に招き入れるのだった―――。

– – – – – – – –
とりあえずモブ主とアル主とエロエロとご主人様受けと、って色んな要素混ぜを目指した結果がこれだよ!おかしいな!

Bon anniversaire、にゃんくるさん!!
たくさんの愛と感謝を込めて。