主ロレ

「ん…ふ、ちゅ…っ」

講義と称した調教のひとつとして、ローレンスに奉仕をさせることにした。
たどたどしい舌遣いで、遠慮がちにするそれは、到底俺を満足させるものではなく。

「ふん、ヘタクソ」
「…っ」
「キスもリードも下手で、奉仕すらまともにできねえと来た。……お前、うちの屋敷のどの執事よりもヘタクソなんじゃねえの」
「…な、っ…!」

肘掛けに寄り掛かり、頬杖をつきながら俺の足元に跪くローレンスを見下ろし、嘲笑する。
そうすれば、ローレンスは今まで受けたことのないであろう仕打ちに、ギリギリと歯を噛み締めながら、俺を睨みつけた。尤も、体勢のせいもあって上目遣いにしか見えないが。

「ふは、あんな程度の舌遣いで俺を満足させられるとでも思ってたなら、随分とめでてえ頭してんな」
「……~~っ!こ、んな…こと、別に出来なくても…いいんですよっ!」
「ふぅん?東雲は此処をこんな風にされるの、好きだぞ?」
「…ぁっ」

そう言って東雲にする時の動きを再現するようにして手を動かせば、ローレンスはごくり、と喉を鳴らせて俺の手元を食い入るようにして見つめる。
ローレンスの唾液により滑り易くなったそれを扱いていけば、段々とそれは熱を持っていって。

「なんだ、お前俺のを舐めて興奮してんじゃねえか」
「…これ、は…ちがっ」
「ふん、ならこれはなんだ」

言いながら、足でローレンスのものを踏みつけてやると、ローレンスは苦しげな、けれど明確な快楽の表情を浮かべながらそれを受け入れる。

「……っ、ぁ」
「それとも、なんだ?俺の自慰を見て興奮したとでもいうのか?」
「……ン…っ、ぃ…っ」

すくりと立ちあがってズボンを押しやるようにして存在を主張するそれを、ぐりぐりと踏みつけ、ローレンスの顔の前に自慰により高ぶったそれを持っていけば、ローレンスはそれから逃げるように顔を背けて。

「誰がそっぽを向いて良いと言った」
「…なっ」
「舐めろ」
「あ、あなたは…自分が何を言っているのかわかってるんですか!?」
「ふ、面白いことをいうな」

ローレンスの顎を掴んで、無理やりこちらに向きやらせると唇に押し付け、咥えるように言えば、ローレンスは頬をかぁっと紅潮させ、きゃんきゃんと喚く。

「誰に物を言っている」
「…ぅン―っ!?」
「前々から思っていたが、お前は自分が執事だという自覚が少し足りないようだな…。この際だから、思い知らせてやろうか」

無理やりローレンスの頭を掴んで、唇を割って咥えさせると、そのまま頭を前後させた。

「…ンンン――!!」
「は、間違っても歯を立てようなどと思うなよ。その時点で自分が酷い目に遭うと覚悟しろ」
「…っ」

生理的な涙を零しながらも俺を睨みつけていたローレンスは、その言葉にびくっと肩を震わせ、大人しくなった。…ふん、やはりそのつもりだったか。

「…そもそも、今まで少し甘やかし過ぎていたのかもしれないな――」
「あっ…」
「咥えるのはもう良い。このままじゃいつまで経ってもイけやしねえ」
「…なっ…貴方が、やれと言ったんじゃないですか…っ」
「ふん、お前があまりにも下手過ぎるからな。奉仕はまた今度じっくりと教えてやろう。今日はお前を躾けてやる。」
「…し、躾なんて僕には必要ありません…っ!触らないでください…貴方は、本当に変態だ…っ!」

言葉では噛み付きながらも、ローレンスの身体は抵抗を示してはいなかった。

「ふ、ならばそんな変態に触れられて悦ぶお前も変態ということになるな」
「一、緒に…しないでください…よ!」
「………くくっ、いつまでその生意気な態度が続くか――愉しみだ」

必死に虚勢を張るローレンス。まるで毛を逆立て威嚇をする小動物にしか見えないそれに、思わず笑みが零れる。
ローレンスの腕を掴んで上で束ねると、ロープで身動きが取れないように縛り上げた。

「……ふっ、所詮こんな道具に頼らないと、怖いんですか」
「………。」
「なんです?図星をつかれて反論する気もおきませんか」

漸く形勢逆転のチャンスが訪れたと思ったのだろう。ローレンスの表情は目に見えて生き生きとしたものになる、が。
残念ながら俺が拘束した理由は、もちろん抵抗が怖いなどという理由ではない。当たり前だろう。
例えローレンスが暴れていても、俺の方が力は強く、抵抗出来なくする術をよく知っているわけで。押さえ込むことは容易だ。

「くく…っ」
「っ、なにがおかしいんです」
「…いや、随分とよく回る口だと思ってな」

拘束された肢体に、反応した下半身。強気な態度は余計に征服心を煽られるだけで。

「……っ、馬鹿にしてるんですか…っ」
「……いや、ただ―――」
「ひっ」

身動きの取れないローレンスを床に転がせ、服を寛がせていく。
短く悲鳴を上げるローレンスなど素知らぬ顔で、高ぶったそれに手を這わせれば、すぐにローレンスの顔は蕩けるものになった。

「ふ、相変わらず快楽に弱い身体だな…東雲とは違った意味で、だけどな」
「……健吉さんのことを、馬鹿にしないでください…っ」
「くく、見向きもされない癖に、よくもまあ飽きもせずそんなのあいつを慕えるもんだ。東雲はもうとっくに、俺に堕ちているというのに」
「…………っ」

身体を攻められ、心から慕っている東雲のことを言われ、ローレンスの必死に守って来た虚勢が、ついに限界を迎えたのだろう。

「ふ、ぅう…っ、…や、ら…っ」

ズタボロに傷つけられた自尊心とは裏腹に、身体は与えられる幸福な刺激に酔いしれて。
ぽろぽろと涙を流しながら、首を振って嫌々するしか出来ないローレンスの頭を撫でながら、耳元でやさしく囁く。

「泣くなよ」
「あ、…なたが…っ、そんな、意地の悪い…ことばかり、いうからじゃないですか…っ」

切れ切れの言葉で恨めしそうに言うローレンスに、流れる涙を舌で掬い取るようにして舐めとり、また囁く。

「俺といるのに東雲のことばかりなお前が悪い」
「………は…っ?」

俺の言葉に、ローレンスは目を大きく見開き、それから、少しして漸くその言葉の意味を理解したのか、ボっと顔を赤らめた。

「…ふ、なんでそんなに真っ赤になるんだ?お前、俺のことが嫌いだろう?」
「……なっ、それは…でも、だって――そんなこと、言われたら…」

長い睫毛を伏せ、ローレンスは恥ずかしそうに俯く。
すっかりと、俺から与えられた好意に似た言葉を受け、動揺と、それと共に湧いた喜びの感情に戸惑っているらしい。

「くく、お前…いつも俺に噛みついてばかりいるからわからなかったが、案外可愛いやつなんだな」
「…なっ、か…かわいいとか言わないでください…!」

純粋な男だ。だからこそ長い間東雲を一途に好いて来れたのだろうが、こうして嫌いな相手から好意に似た感情を向けられたことにより、意識をしてしまうほどに、すれていない。…湧き出たのは、純白の雪を踏みしめ汚したいという暗い快楽に似た感情だった。

「なあ、ローレンス」
「な、んです…?」
「キス、練習の成果見せてみろよ」

鼻と鼻が触れるほどの距離まで顔を寄せ「前に沢山練習しただろう」と言いながら指先で自分の唇をトントンと叩いて笑えば、ローレンスは戸惑いながらも、言われるがままに唇を重ね合わせて来た。…散々痛めつけてやったのが効いたのか、それとも先ほどの鞭の後の飴が効いたのか、ローレンスはすっかりと従順だ。

「…ン、っう…はぁ…っ」

前のぎこちないキスとは対照的な、舌を差し入れ絡ませて来るような濃厚な口付けに、思わず目を細める。
ローレンスはすっかりとキスに夢中になって、蕩けきった表情で俺の舌の動きを追いかけるようにして舌を絡め合った。

「……ン、ちゅ…は、あっ」

やがて長い口付けを幾重か交わした後、ローレンスは名残惜しげに唇を離し荒く呼吸を繰り返して。

「…上手になったじゃないか」
「……ん」

想像以上の練習の成果に、ローレンスの頭を撫でて褒めてやると、目を細めて気持ち好さそうにそれを受け入れる。…まるで猫のようだと思った。

「この調子で奉仕の方もうまくなると良いんだがな」
「…っ、」
「なんだ、咥える想像だけで興奮したか?…内股を擦り合わせて、厭らしい奴だな…」

無意識だろうか。奉仕という言葉に、内股を擦り合わせたローレンスのくつくつと喉を鳴らしながら、腿に手を這わせじれったい愛撫をしながら、耳元で囁いて。

「……ン、ぅう…っ」

中途半端に高ぶった身体は、さぞや辛いことだろう。
腿を撫でる俺の手を見つめながら、悩ましげに眉を顰め、けれどほんのひとかけらのプライドが邪魔をして、一言を告げることが出来ないのだ。

「……ふ、ズボンが随分と窮屈そうだな」

ズボンを押し上げ存在を主張するそこを見下ろし、けれど其処に手を伸ばしてはやらない。

「…う…ぁ…っ、ご主人、さま…っ」
「ん?」
「ぼ、僕…っ、…ン!」

口をぱくぱくとさせているローレンスに悪戯心が芽生え、耳朶を甘噛みしてやれば、面白いくらいに身体を震わせた。

「なんだ、なにか欲しいものがあるならば言うがいい」
「あ…、」
「自分から求めないと、待っているだけじゃ何も与えられないぞ――ほら」

なにが欲しい?と耳元で甘く囁けば、ローレンスは目をぎゅうっと瞑りながらも、小さく呟いた。

「…も、イかせて…くださ…い」
「どうやって?」
「………ご主人様、ので」

耳を澄ませないと聞こえないくらいの小さな声で、けれど確かにローレンスはそう言った。

「…ふ、いいだろう」

面白いくらいに簡単に堕ちたローレンスに、おもわず零れる笑みを抑える気など起きる筈もなく。

「――くれてやるよ、お前が欲しがったものを」

そうしてゆっくりと、塗りつぶしていく。ローレンスを占めるものの割合を、少しずつゆっくりと、けれど確実に。

「あ、…ぁ…あっ!!」

後ろからローレンスを抱き寄せ、腰を押し付けて。
ゆっくりと割って入っていくソレを、ローレンスの中は侵入を許していく。
そうして、やがてそれはすっぽりとローレンスに飲み込まれて。

「……は、ぁ…、ぅン…っ」

いつしかローレンスは自ら高みを目指すように俺の動きに遭わせて無意識に腰を揺らしていて。

「さて、次はなにを教えて欲しい?」

調教と言う名の講義は、まだまだ終わらない――。

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ツイッターとお仲間としてお世話になってます紗英さんに捧げますー!
ひぃ、ローレンスの偽物具合がやばい…!!リクエストに沿えてない…( ゚艸゚;)
こんなのロレじゃない!とか書き直して、などありましたらホント、すぐ言ってください…。