主東

!東雲ガチャのお風呂より一部セリフ引用あり

東雲ガチャの続きもどき。[お風呂Special]東雲健吉。シナリオ風を目指して撃沈orz

ある日のこと。
帰り支度をしていた東雲は、橘に呼び止められた。

「あれっ、珍しいっすね……なんか用事でも?」
「ご主人様からの言伝でございます」
「へ?ご主人様からですか…なんでしょー」
「本日は泊まっていけ、とのことです。」
「ああ、はい。それじゃあ客室の鍵を――」
「いいえ。ご主人様のお部屋でお待ち下さい」
「へ?」

思いも寄らない橘の言葉に東雲は目を丸くさせて間抜けな声をあげる。が、橘はそんな東雲の反応など素知らぬ顔で、一礼をして立ち去ってしまった。

「………ええー…」

残された東雲はただひとり、渡された万里の部屋のスペアキーを手の中でその鍵を弄ぶ。
自分には過ぎたるものを手渡され、その重みに、ただただ困惑するしか出来なくて。

「………ご主人様の部屋で待ってろ、なんて」

困惑しながらも素直に命令の通り万里の部屋へと向かっている自分に、苦笑い。
結局のところ酷い目に遭わされるだけと解ってはいても、ときめく鼓動をとめることも誤摩化すことも、東雲には出来そうにない。

……………
……………………

ほぼ寝るためだけの部屋とは言っても、特有の生活感はにじみ出るもので。
身じろぐとふいに感じる万里のにおいに、東雲は微かに頬を赤らめながら一人で座るには些か大き過ぎるソファーに身体を預ける。

「……なんで、俺…なのかな」

東雲がこうして万里に呼びだされることは少なくない。しかし、今回のように仕事で留守中にも関わらず東雲を自らの部屋で待たせるなどということは、もしかしたら初めてかもしれない。

「………ご主人、さま…」

おしゃれな総本革張りのソファに良く合った、シックなクッションを抱き寄せ、顔を埋める。
家に帰ればいつだって一人の部屋に慣れているはずなのに、どうしてかこの部屋で主を待っていると、寂しいと思ってしまう。
早く帰って来てほしい、と願いをこめてより一層クッションを抱き寄せれば、先ほどより強く万里のかおりが鼻腔をくすぐり、東雲は唇を噛み締めた。

「さみしー……」

東雲の、耳を澄まさないと聞こえないくらいの小さな声は、誰の耳にも届かずに空気に攫われ、消えていく。
そうしてクッションに顔を埋めて目を閉じると、微かに聞こえた靴の音。途端にバッと顔をあげてしまい、その動きが、まるで主の帰りを待つ犬みたいだ、なんて馬鹿なことを考えて、わらう。
近づく足音にジッと扉の方を見つめていれば、それから程なくして開く扉。

「なんだ、変な顔をして」

気疲れした様子の万里に、東雲は勢い良くソファーから起き上がり、万里の方へと向かっていく。

「変な顔って、ひどいっすねー」
「 …ふぅ、まあいい…帰ったぞ。……今日は疲れた。――風呂に入る。」
「おかえりなさーい。…ありゃ?ご主人様、今日は結構飲んでます?顔も赤いし…――」

話をしながら万里からコートを受け取り、それをシワにならないように丁寧な手つきでハンガーにかけていく。
いつもより胡乱な目をした万里は、何処から見ても酔っ払っていた。心なしか千鳥足である。

「ああ、…隠居のジジィ連中が調子に乗ってすすめてくるから……飲み過ぎた……」

いつもよりも少し拙い口調に、フッと口元が緩む。かわいい。と素直に思った。滅多に見せない隙だらけの姿に、胸に浮かぶのは優越感。――…俺に、気を許してくれてるんっすよね。
自分だけじゃないと知っていても、その中に自分がいることが嬉しくてたまらない。それに今は、そんな万里の弱いところを見ているのは自分ひとりなのだ。

「はは。なんか、フラフラしてるご主人様って新鮮っすね。……って!何してんですか…?!」

足に力が入らないのか、自分に寄り掛かるようにして体重をかける万里をじゃれているのだと微笑ましい気持ちでされるがままになっていると、その動きに何処か違和感を感じ慌てて東雲の身体をまさぐる万里の腕を掴む。
と、万里は何故止めるんだ、と非難するような目線を向けてきて。

「 風呂。入るつってんだろ。早く準備しろ。」
「 いやいや、俺の服は脱がさなく、て…いーんです……ッ…ちょ……ご主人様…、そんな…、触んないで、くださ…」

抵抗すればするだけ、万里の手のひらはどんどんと下の方に下がっていき、東雲の弱い箇所を攻めるように動く。
万里により調教され尽くした東雲の身体は否応なしに熱を持ち、万里の慣れた手の感覚に、嫌悪感を抱くことなく、刺激を受け入れていく。
口では嫌だ、と漏らしながらも万里の手首を掴む東雲の手には全くといって良い程力が籠ってはおらず、むしろその手は万里の手に沿うようにして、置かれていて。

「 なーに抵抗してんだぁ?全然嫌じゃねぇ癖に…。腰が揺れてんだろ。」

くつくつとわらう万里。
早急な手つきだというのに、的確に東雲の弱い箇所を攻めるその手に、ぼんやりとしてくる頭を必死で耐えている東雲に、万里は更に追い打ちをかけるようにして東雲の唇に噛みつくように口付けた。

「……!ふ、ぅ…ン…ッ」

段々と深くなっていく口付け。身体に触れられること以上に珍しい口付けに、それだけで身体が熱くなっていく自分が情けないと思いつつも、東雲は口付けに応えるように目を閉じてしまった。――……このキスに意味なんてない。ただの酔っ払いのキスだとしても、嬉しいと思っちまう俺が一番タチわりーわ…。

報われない恋なんて、そんなもん自分がするはずないって思ってたのにな。

……………
…………………

「……ふ…ッ、……」

――これがまだ、倉科や芹沢のようなかわいい顔をした奴相手ならわかる、けど。俺みたいなガタイのいい男の身体など、触っていても楽しくないだろうに。

万里の股の間に身体を捩じ込まされ、時折尻に感じるその熱に羞恥で顔が熱くなる。そんな自分の反応を楽しむように更にそれを押しつけてくる万里をキッと睨みつけるが、万里は面白そうに口元を釣り上げるだけで効果はなく。

「……ふぁ…っ!!」

感じる熱に気を取られていると、指の腹で抓るように乳首を摘まれ、痛みとも嬌声ともとれる声を漏らし、慌てて口を押さえようとするがその前に万里の指が咥内に捩じ込まれ、それもかなわない。

「ふぁ、ら…り、れす…か?」

東雲の問いかけにも応えず無言で指を増やす万里。
気まぐれに万里がさせる奉仕よりも、細い指。苦い味のしないそれに、少しだけ残念に思った自分がいることに気付いた時、東雲は無意識に自ら万里のそこを擦り付けるように腰を震わせて。

「―――――ふ、んんん!!!!!!」

無遠慮に咥内を蹂躙する指に、生理的な涙が溢れ出て、声にならない声をあげれば、突然身体を貫かれるような強い刺激を受ける。
ろくに解されていないというのに、何度も万里を受け入れているそこは、呆気なく万里の熱量を飲み込んでしまう。

「……っくく、欲しかったのはわかるが…そんなに…締め付けんな…っ」
「ふ、ぁ…し、めて…な…っ」

広い浴槽。いつの間にか体勢は変わっていて、東雲は浴槽の縁に手を添えながら、自分に覆い被さるようにしている万里の重みと熱を受け入れながら、自分でも無意識のうちに万里の方に上半身を捩らせ、キスを強請る。

「………く、嘘…つくなよっ、こんなに、ぎゅうぎゅう、うまそうに人のこと飲み込みやがって…は…っ」
「っ、ん、あぁ…ひ、…そんな…、ンぁあ…!」

反論をしようとすれば、万里はそれを許さないと言わんばかりに東雲の弱いところを掠めるようにして腰を強く打ち付けて来て。
東雲は、ただ縁に身体を預けながら、万里に好きなように身体を揺さぶられるしか出来ないでいた。

「は、ぁあー!ン、ひぃ、い…あぁ…あっ」
「……はっ、なんだ…、随分愉しそうじゃないか」

――自分は今一体どれだけだらしのない顔をしているんだろう。

無遠慮に腰を打ち付けられながら、咥内を指で蹂躙され、ただ嬌声をあげるしか出来ないでいる東雲は、欲望に染まる頭で、ぼんやりとそんな事を考えていた。

「ンン…ぁ、お、湯が…くる、し…」

万里がナカを突く度に隙間からお湯が侵入して、いつもとは違った感覚。抽送を繰り返す度、お湯までも激しく出入りを繰り返し、強い圧迫感に襲われた。

「………ぁ、だ、め…も、俺……ごしゅじ、さまーっ」
「イけ」
「あ……イ、…っ…っ!!」

万里が数回屹立し震える前を扱いただけで、既に限界を超えていた東雲の身体は欲望を吐き出してしまう。
自分でも気付かぬうちに達していた東雲は、ふと目の前のお湯に白濁としたものが揺れていることに気付き、羞恥で顔を赤らめた。

達したばかりで敏感なナカには、未だ萎えることを知らない万里の熱いものがいて。

「……まさか、これで終わりと思ってねえだろーな」
「…え……?……ひ、ぅ…!」

まだ敏感なそこを無遠慮に擦られ、東雲は堪らずに二度目の絶頂を迎える羽目になってしまった。所謂ドライオーガズムである。

「ぁ、ア…ッ……あ、三宮、さ……っ!」

何度も何度も敏感なところを擦られ、ヨダレでべたべたになった顔に気まぐれにキスをされて、感じ過ぎて鼻をすすりながら泣きだしてしまう東雲の頭を胸に抱くようにして抱き寄せる。

「……ふ、ぁア…や…っ!」

鼻腔をくすぐるだいすきな人のかおりと、怖いくらいの刺激と。

「………くっ、い、くぞ…東雲…」
「……あ…、」

耳元で囁かれる、切羽詰まったような万里の声。それからラストスパートをかけるように万里の腰の動きは早まり、それから程なくして東雲のナカへと吐き出される熱。耳元で聞こえる、万里の微かに掠れた吐息に、東雲の胸はきゅっと締め付けられ、無意識にナカにいる万里を締め付けてしまう。
達したばかりの自身を締め付けられ微かにうめき声をあげた万里は、ゆっくりと東雲のナカから自身を抜き、そのまま東雲の身体にもたれかかるように、肩に顎を乗せ、甘えるように抱き寄せてきて。

「………な、にしてんすか…」
「…酔ってる時にするもんじゃねーな…頭いてぇ」
「……はぁ!?ちょ、大丈夫なんすか…そんな、無理するからっすよ…」

大の大人がふたり、明らかに情事の色を残しながら、身を寄せ合っている姿などギャグ以外のなにものでもないと、東雲は胡乱な眼差しを万里に向ける、が。当の万里は未だ東雲の肩に顎を乗せながら、気怠げな表情で頭を押さえていた。

「……しかたねえだろ、お前が部屋で待ってる姿みたら、ムラムラしたんだから」
「………!な、に…いってんすか…」
「顔が赤いな。…本気にしたか」
「!からかったんすか…随分悪趣味なことしますね」

いくらどんだけ悪趣味なことをされても東雲は万里を嫌うことはないだろう。けれど、これはあんまりだと思った。自分の純粋な思いを、馬鹿にされたと思った。
東雲は心配そうな表情を、怒ったようなそれに変えて、万里を睨みつける。
けれど万里は、そんな東雲に対してフッと相変わらずの笑みを浮かべるだけで。

「怒るなよ、別に茶化したわけじゃない」
「じゃあ何……ンっ!?」

万里の言葉を更に追求しようとした矢先、突然唇を奪われ、東雲は目を見開いてそれを受けるしか出来なかった。

「…なに、を…ン、やめ…っ」

誤摩化すようなキスに、流されたくないのに再び熱を持つ身体がひどく恨めしくて、東雲は涙の膜で覆われた瞳で、キッと万里の事を睨みつけるしか出来ない。それが酷く、歯がゆかった。

「………東雲、」
「なん、すか」
「お前はわかりやすい男だな。拗ねたのだろう?――かわいい奴だ」
「な!?」

かわいい奴、だなんて。オッサンにいう台詞じゃないというのに、万里にそう言われてイヤな気持ちになるどころか、嬉しく思ってしまう自分がいた。カッと顔を赤らめ絶句する東雲に、万里は更なる一言を発する。

「許せ、東雲。」
「……?」
「好きだ」

―――好きだ、と言われた瞬間に、また万里に唇を奪われて。

東雲の頭では処理できないほどの、大きい衝撃。
それは、万里の口から出たとは凡そ思えない、それくらい衝撃の言葉だった。

「……え、…なん…?」

今、なんて。と、それを言葉にするのも出来ないくらいに、東雲の衝撃は大きくて。
驚きに目を白黒させている東雲に、万里は今までにないくらい優しく微笑む。その笑顔に、東雲はどうしようもないくらいに胸が締め付けられて、何故だか涙がとまらなくなる。

「……おまえ、案外泣き虫なんだな」

知らなかった、と笑いながら、万里は舌で掬い取るようにして涙を舐めとる。その度にびくんびくんと震える東雲にクツクツと笑いながら。

「………さっきの言葉って……本気、なんすか」

本気であって欲しいけれど、気のせいであってもほしい。
そんな背反するふたつの思いが、東雲の中で鬩ぎ合う。心を通じてしまえば、今よりももっともっと我が儘になる。きっと、万里は今まで通り変わらないのに。

自分だけが、自分だけがもっともっとと、欲しがってしまうから。
片思いよりも辛い恋なんて、したくないのに。

「本気だったら、どうするんだ?」

挑戦的にわらう万里にどうしようもなく心がざわめくから、もうこの気持ちに目を背けることなど不可能なんだろう。

「本気だったら、こう、します…」

だからせめて。

「!」

万里の唇に自分から唇を寄せ、キスをすれば驚いたのか微かに万里の目が見開かれる。
万里の動揺を引き出せたことが嬉しくてしてやったりと頬を緩ませれば、それに気付いた万里が反撃とばかりにキスを返してきて。

「俺を出し抜こうなど百年早いぞ」
「……ふ、…っ、…ご主人様、らしいっすね…」

その劣情を含んだ眸を向ける相手が、自分だけであるようにと願いをこめて。

東雲は誘うように自分から手を伸ばし、万里の首に腕を回すと、そっと眸を閉じて更なる口付けを強請るのだった――。

– – – – –
朗さんに捧げますー!お近づきの印に!そしていつも変態なたぎに付き合ってくれてるお礼に!お互い存在は知ってたけど、絡んだのはつい最近ってことで…存在を知ってたからかもしれないけど、気軽に出来る雰囲気がある素敵なひとです、だいすき!これからも仲良くしてねー!