愛が、足りませんか

ぬちゅぬちゅと部屋中に響き渡る厭らしい水音。
腰を揺らめかせる度にいきり立つ熱いそれに内壁を抉られ、脳みそがシェイクされそうなほどの強い刺激に三日月は絶え間なく甘い嬌声をあげていた。

「あ、はぁ…ンっ、そこ…イイっ」
「……は、ッ…ク…」

後孔を犯す熱く硬い質量と、抱き潰すかのような乱暴なピストン。後ろから逞しい腕に抱き締められ、背中越しの熱量に縋るようにしなだれかかれば、耳元で感じる艶やかな吐息にゾクリと背筋には悪寒とは違ったなにかが走って。
与えられる強い快楽に体を震わせれば、ぬっと伸びて来た手のひらに自身を扱かれ、二点から与えられる刺激に三日月は堪らず白い咽喉を弓なりに反らせたのだった。

「あっ、は……、さいっこー…」

性急な手つきで肉付きの悪い尻を鷲掴まれ下から激しく打ち込まれれば、既に内壁いっぱい満たされた質量が更に奥深くへと挿し込まれて、三日月は堪らなくなって身を捩らせた。

「……っ、ん、ふふ……」

自分をオカシくさせているのが目の前で涼しげな、けれど隠し切れていない欲望を孕んだ瞳、それを自分に向けているこの男の昂りなのだと思うと、笑みを零さずにはいられなかった。

「あ、ひぃ…ンっ、…ご主人様ぁ……すごく…イイっ、…だから、もっと……ッ」
「―……」
「ご主人様が、ぁ…ひ、ッ…欲し……、あァっ…ン!!」

まるで娼婦のように淫靡な動きで腰をグラインドさせながら快楽を貪れば、がくつく膝と物欲しげに口を開閉させて汁を垂らす自身を目に入って、三日月は舌舐めずりをしながら、凶暴なまでの欲望を叩き付けて来る男の唇を奪って、更に深い快楽の渦へと落ちていくのだった――。

「……ん……」

行為後特有の気怠さを纏いながらぼんやりと薄目をあければ、隣に在るはずの気配は感じられなかった。
どうやら少し眠っていたらしい。身じろぐ度に内側から溢れ出す欲望の証に、フと笑みを零す。自分の中に残していった万里の証。子種。
どれだけ精液で腹を満たされても決して孕むことが出来ないことがすこしだけ残念に思った。――きっと、あの男と自分の子どもならとてもオモシロイ子が出来ただろうに。

「んふふ…」

たっぷりと吐き出された欲望が溢れ出す感覚が、三日月は好きだ。自分に向けられた暴力的なまでの欲望に、捕食され己のすべてが制圧されたようなこの感覚に、どうしようもなく興奮を覚えるのだ。

自分の腸液と万里のそれが混ざりあった、白濁色をした液体が三日月の真っ白な尻の曲線をつたいシーツを汚す。じゅわり、と内側から溢れ出すそれを感じる度に、三日月の自身が首を擡げ内股に擦れ合う感覚が堪らなく気持ち良くて。

華奢な三日月がごろんと寝転がっても十二分のスペースがあるそれの持ち主はどこに行ったのだろう、とぼんやりと考えて…直ぐに止める。きっと、シャワーでも浴びているのだろう。
帰って来たら、お腹いっぱいに満たしてもらおう、それまでは万里の匂いと精液のにおいとが混ざりあったこのベッドで、ひとり遊びをしていればいい。

「あ、…ンっ、はぁ…あ…」

足をM字型に開いて少し腰を浮かせれば、既にそそり立ったソレがぺちり、と腹にぶつかり先走りを零す。少し刺激を与えただけでも欲望を吐き出してしまいそうなそれに指を這わせれば、すぐによだれを垂らし始めるそれ。
すらりと伸びた太ももは期待からか震えていて、窄まりから絶え間なく溢れ出す性交の証に、また身体を捩らせたのだった。

「……あ、ひ…ァ…ぁあッ、…ンっ」

滑りの良くなったそれに指を絡ませ、もう片方の手では窄まりに指を這わせれば、ぬちゅぬちゅと厭らしい水音が部屋中に響きわたって。

「あ、あぁん……っ、あっ、は…っ、やぁああん…っ、あ…っ、あ…っ」

先ほどまで内壁いっぱいのそれを咥え込んでいたそこは、指を数本増やしたところでより一層の寂しさを感じるだけに過ぎなかった。
寂しさとは裏腹に昂っていく身体は、開放を求めぱんぱんに膨れ上がりそうしてやがて終わりを迎えるのだった。

「い、くぅう…、いっちゃうよお、ご主人…サマぁ…っ」

チカチカと目の前に星がひかり、開放と共に真っ白になる脳内。
思わず呼んだその名前に反応するように、扉の向こうからは待ち望んだその人の姿が現れて。

「随分と楽しそうだな」
「あ、はぁんっ、やっと…来たぁ。……ね、ご主人様…ください。俺もう、ほし…っ」

シャワーを浴びた直後なのだろう、濡れた髪はぺたりと頬に張り付いていて、ほんのり上気した頬はどこか行為中を彷彿とさせ、艶かしい。
三日月は達したばかりでくたりと弛緩した身体を押し広げ、快楽に蕩け切った瞳を濡らしながら、そう懇願する。
身体中に纏った精液と、男を求めせつなげにひくつく赤は壮絶な色香を纏っていた。

「ひゃうううう!!!!…あ、…っ、ぐ…ああっ、あ!!」

万里は達したばかりの三日月の亀頭を指先で抉るように責め立て、時折猫の手のようにして円を描くように撫ぜる。
そうすれば三日月の身体は面白いほどに弓なり、嬌声は明らかな苦痛を含んでいた。…達したばかりの敏感なそこを責め立てられ、強すぎる快楽は苦痛を伴っているのだ。
逃げるようにして悶える三日月を押さえつけ、更なる刺激を与え続ければたらたらと透明の液体を垂らし続けていたそこは、突然プシュリとまるで水鉄砲のように、透明の液体を吐き出した。

「あ、ああんッ」

吐き出している最中も堪えずびくびくと震えるそこを扱き続ければ、勢いよく吹き出したそれが三日月の腹や、万里の方にまで飛び散って。陸に打ち上がった魚のように身体を震わせながら、襲い来る刺激がまるで永遠のように感じられた。
今まで片手で数えるほどにしか経験していないその苛烈な刺激に、抱いたのはこの上ない幸福感と、悦び。

「あ…あ……あ……、ぁ…はァ…ん」

暫く続けていればだんだんと勢いのなくなるそれに、漸く責め手を緩めた万里。三日月はくたり、と身体を横たえると、汗と精液と三日月の出した潮とが染み込んだシーツに顔を埋め、万里の方に尻を突き出すような体勢をつくる。

「……は…ぁ…すっごい、ヨかった、…ね、ご主人様。こっちも、可愛がって…?」

そうして片手で尻たぶを掴めば、ぷっくりと腫れた窄みが晒されて。
万里は誘われるがままに三日月の窄みへと自らの痛いくらいにそそり立って自身を突き差した。

「ねえ、ご主人様」
「……どうした」
「去年は世界に譲ったけど、今年はトーリくんにご主人様の時間をくれますよね?」

ぐちゃぐちゃに乱れた姿はそのままに、三日月は万里の逞しい胸板に擦り寄るようにしてそう尋ねる。

「なにを企んでる?」
「企んでなんかいませんよぉ」

「クリスマスなんか、それこそお前を独占したいと思っているやつらがわんさか沸くだろう」
「ふふ、やだなあご主人様ったら。”特別”な日に会ったらそれこそ平等なんて出来ませんよ」
「――なら一層、そんな日に何故俺に会おうとする?」

まるで雲を掴むように、飄々としてつかみ所のない。それが、万里にとっての三日月の印象だった。
何者にも囚われず、相手を翻弄するだけ翻弄して、そしてそのことを相手に不快に思わせない。天性の才能の持ち主。ハマってしまえば、泣きをみるのは間違えなくこちらの方で。

執着心というものを微塵も感じさせない三日月が、自身で特別と宣言したにも関わらずに敢えてその日に万里とふたりきりで過ごそうと考えた。それは、万里に不信感を抱かせるのは当然のことだった。

「ふふ…だってご主人様、かわいいんですもん」

三日月のその言葉により一層眉根に皺を寄せる万里を気にとめることもなく、三日月はふわりと華やかな笑みを零す。

「もしかして、自分では気付いてないんですかねー。すっごく、綺麗な顔してるんです」

――この時期の、ご主人様。

そう言って、三日月は性的興奮を覚えたのだろう、白い頬を上気させながらほのかに荒くなった呼吸で、万里の顔を見上げると舌舐めずりをしてみせた。

「クリスマスが嫌いですか?…それとも、逆……かな。この時期が近付く度に、ご主人様の目、どんどん綺麗になっていく。食べちゃいたいくらい…」

獰猛な肉食動物のような目で、万里を見つめている。
キラキラと輝く瞳はまるで宝石のようで、けれど何処か作り物めいたそれは何処までも深く、暗く――まるで吸い込まれてしまいそうなほどに。

「悪趣味だな」
「……」

吐き捨てるような万里の言葉にも、三日月は薄く口元を緩ませるだけで。

「トーリくんの愛で、忘れさせてあげます」

軽薄な愛の言葉を唇に乗せながら、三日月は万里の首筋に腕を回すと薄く開かれた唇にねっとりと舌を絡ませて、そして――。

ご主人様LOVE企画に参加させて頂きました。エロしかない主トー。
いろいろな恋のかたち第六弾『ルダス』
お題は【確かに恋だった】さまよりお借りしました。