主朝

※ただの主朝。生かせてない海賊シナリオの続き設定

「――へぇ。じゃあ朝比奈さんは、俺に嫌々付き合ってるわけだ」

分かっているくせに軽薄にわらう三宮に、胸が苦しくなる。

どうしようもなく恋い焦がれているのも、三宮に触れられるだけで浅ましくも更なる熱を求めてしまうのも自分ばかり。

高望みだとわかってはいても、それがせつなくてたまらない。

「…っ」

なにも言えず押し黙る俺に、三宮は不敵に笑い唇を奪うと、悪戯に腰を撫でていた手を、はだけた胸元に差し入れて来た。

「……う、ぁ…」

いつもより冷たい指先に擽るように愛撫され、思わず漏れた声にまた三宮が冷たくわらう。
きっと、嫌だと言いながらも快楽を拾うこの浅ましい身体を、俺を、わらっているんだろう。

「なんだ。しっかり感じているじゃないか、朝比奈さん」

胸を弄んでいる手とは反対の手で、しっかりと反応をしている俺のものに触れ、三宮は俺の耳元で嘲るようにそう囁いた。

「嫌なのに身体は反応するだなんて、朝比奈さんはとんだ淫乱だな?」
「……ち、が」

違う、と否定の言葉すら紡げず、言葉にならない言葉と共にただ首を振るしか出来ないでいる自分が不甲斐なくて、何故だか涙が溢れてくる。

こういう涙は三宮を面倒臭がらせるだけだと涙を止めようとすればするだけ、涙は余計に溢れ出て来て。

「…っ、ぅ…くっ」

せめて泣き顔だけは見られたくないと俯いて両手で顔を覆うが、その手も三宮に無理やりはがされてしまう。
そうして無理やり顎を掴まれ上を向かされると、噛み付くように口付けられた。

「ん…ぅっ!?」
「隠すな」

突然の口付けに驚いて目を見開くと、まるで獰猛な獣のような三宮の視線に射抜かれ、三宮は強い口調でそう言い放つ。あんなに止まらなかった涙はもう、止まっていた。

「俺に隠すな、朝比奈さん。どんな小さな事も朝比奈さんのすべては俺のものだ」

それは剥き出しの独占欲。
傲慢とも取れるその台詞は、けれど俺にはすごく嬉しいもので。

「………み、…つみや…」
「…ふ、今の朝比奈さんの顔、すげえヤらしい」

三宮の言葉に、サッと顔が赤くなる。
散々口付けられ、唇はテラテラと唾液に濡れているだろうし、中途半端に高ぶらされた身体は火照り、更なる快楽が欲しいと甘く疼いている。

――今の自分の顔は見られたものではないはずだ。

「見、るな…っ」
「朝比奈さんがこんなになったのは俺のせいだからな。責任をとろう。…それに、言ったはずだろ。朝比奈さんのすべては俺のもんだって」

羞恥に三宮の腕のなかで暴れるも、三宮は取り合わず、むしろそんな事を言うばかり。
当たり前に言い放つそれに、呆れながらも口元は微かに緩み、身体の力を抜いて遠慮がちに三宮にしなだれかかる。

身体を寄せると良くわかる。俺ほどではないにしろがっしりした胸板。鼻腔を擽る三宮のかおりに、ズンと身体の中心が熱くなる。

「朝比奈さん、もしかして俺の匂いだけで感じたのか?」

まさしく図星を突いた三宮の指摘に赤くなる。
三宮のかおりに包まれ、ベッドの中を思い出したなんて恥ずかしくて言えなかった。

「…ち、がう」
「ほんと…可愛いな。朝比奈さんは」

こんな男を可愛いなんていえる三宮は相変わらずどうかしているに違いない。
だというのに俺は、三宮からの可愛いという言葉が嬉しくて。…どうかしているのは俺も同じ、か。

「たっぷり可愛がってやるよ」

俺の気持ちを分かっていながら弄ぶひどい男。
そんな男に恋い焦がれて弄ばれても良いとすら思っている。
俺を見てくれるならそれでも良いなんて思ってしまう俺は、きっと、もうコイツから離れられないのだろう。