じんくぜ風味

1【お題:名字を捨ててあげようか】
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「へえ、陣。見て、結婚に関する法律が改正されたみたい」

テレビから流れてくるニュースキャスターの無感動な声は、確かに貴裕の言葉通りの旨の報道を伝えていて。

「ああ、大ニュースだな…」

とはいえ国民に根付いた意識はそう簡単に変わるものではないだろう。けれど救われた人間はきっと少なくない。

「ねえ、陣。――名字を捨ててあげようか」

まるで近所のコンビニにでもいくような、軽い口調。
投げられた言葉の意味をうまく理解出来ずに一瞬遅れた反応に、貴裕はそれが答えと捉えたのかもしれない。

「冗談だよ」

嘘付け、傷付いた癖に。下手くそな笑顔で隠そうとするなよ。

2【お題:喪失の予感】
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――ああ、好きだ。

ふとした瞬間に実感するその想いは、胸の内が温かくなるような穏やかなものだった。

いつかこの曖昧な関係は崩れてしまうだろう。そんな喪失の予感は、けれど決して嫌な気分にはならなかった。

今までは幼馴染として、そしてこれからは――として。隣にあり続けられることを願っている。

3【お題:内緒の話】
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「内緒の話をしてあげようか」
「…内緒の話?」
「そう。とびっきりの内緒話。聞きたい?」

小首を傾げて貴裕は悪戯めいた笑みを浮かべる。
聞きたいかと問われれば勿論気にならない訳がなく。頷いた俺の耳元に口を寄せると、貴裕は声を潜めて囁いた。

「好きだよ」

そう言って恥ずかしそうに笑うお前に俺は――

4【お題:「日だまり」「背骨」「寒い」】
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肌寒さに目を覚ますと、縁側へ続く窓が大きく開け放たれていた。
久世は覚醒しきっていない頭を軽く振り、ぼんやりとした瞳で辺りを見渡す。

「…陣?」

一体いつから起きていたのか、佐々木が縁側の縁に腰掛けながらぼんやりと何処かを眺めていた。 走ってきたのだろうか、こんな真冬だというのに佐々木は上半身に何も纏っていない。
日だまりに照らされながら、微かに湿った髪がふわりと風に靡いていて。うっすらと汗の浮いた背骨が、純粋に綺麗だと思った。
清廉な後ろ姿はまるで一枚の絵画のようだ。例えるなら、そう。健全な色気というやつか。全くいやらしさを感じないそれに、久世は暫くの間見惚れていたのである。その背中に覚えのある爪痕を見付けるまでは――

5【お題:『耳障り』と『そんな』】
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尻餅をついた陣の上に跨り、剥き出しの腹を撫ぜる。

「貴裕、お前どうかしてるぞ…」

困惑の中にも心配の色を含んだ瞳。

――こんな事されてもまだ人の事ばかり気にするんだね。

何処までも綺麗な陣の言葉が、心が。今はただ耳障りな音にしか聞こえなくて。

「これも僕だよ、陣」

そんな唇なら塞いでしまおうか。